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変話
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     どうも、原です。まだかろうじて夏というかんじの近頃、暑さが落ち着いたかと思えば急に暑くなったりと気まぐれな日々が続いております。


     さて、夏といえば怪談、怖い話でございます。これは夏の朝っぱらや真っ昼間にやるのでなく、夜になってからやるのが定番でございます。今日はそんな話を一つしてみようかというわけなのですが、と言っても別段面白いと思っていただけるような話でもないでしょう。これからいたします話は私の子供の時分の話なのですが、怪談、というよりは変な話というような代物なのです。そのうえ幼稚園に通っていた頃の話なもので記憶も曖昧、事実か否かも不明瞭といった有り様にて、芯から震え上がるような恐怖をお望みの方々には、ご期待に添えないことを予め申しておきます。ただ少し変だな、という程度の話なのです。その少し変なのが引っ掛かって、この年まで覚えているという、それだけのことなのです。



     私は幼稚園に通っておりました。仲の良い友人が四、五人いたのを覚えております。しかしそれは特に自分の中で覚えているだけのことで、あの年頃の子供たちは皆友人のようなものなのではないかと思います。
     そんな友人たちと、持参した弁当を食べるのが昼の楽しみでした。同じ組の皆で、大人数でわいわいしながら食べるのでございます。この弁当とは当然親の作ったものでして、私の弁当には私の好物が一つか二つは必ず入っておりました。その頃は小さなウインナーやらかぼちゃやらが大好きでした。このウインナーというのはただのウインナーではなく、切れ込みを入れて炒めることによりタコの脚が四本ついているかのように仕上がる「タコさんウインナー」です。私はこのウインナーがもう大好物、弁当に入っておるたびに大喜びでございました。
     ところで、弁当の時間には少し変わった風習、デザートは最後に食べなければならないというものがありまして、果物などのデザートは米やおかずの後に食べること、との決まりでした。これを破ったからといっても罰則があったりしたわけではないのですが、ただ私はこの「デザート」という曖昧な表現、何がデザートで何がデザートではないのかということを常々疑問に思っておりました。


     さて本題。ある日の昼、弁当の時間。私は自分の弁当を開きました。すると、大好物のウインナーが入っておりました。私はもう嬉しくてたまらず、早く食べたくて仕方がなくなったのでございます。いただきますの号令がかかるや意気揚々。弁当を開き、まず一番にウインナーを食べようと箸でつまみ口に運ぼうとしたその時。

    「なおやくん、デザートは最後って言ったよね」

     先生の声でした。私がウインナーを口に運ぼうとしたその瞬間、先生を始めその場の全員が、ザッとこちらを睨んできたのです。微動だにせず、物音も立てず、ただいつもと違う怒りの表情でこちらを睨みつけてくるのです。ただ睨んでくる。ひたすらに睨んでくる。みんな。みんなが。
     私の箸から落ちたウインナーが、床に転がりました。



     この後どうなったのかは覚えておりません。どうにも現実離れしすぎた話でございますが、しかし、この話は私の記憶に確かに残ってしまっているのです。悪夢、もしくは空想夢想だったのかも知れませんが、それでも今なお記憶しております。
     話の真偽はさておき、その後暫くの間、私が弁当の時間にウインナーがデザートかどうか執拗に聞くような変な子になったことだけは確かな事実です。
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