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沈黙の日々
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    うおおおおおお、そう叫びながら走り出したのは一人の老婆であった。

    「バーゲンセールかよ。」

    そう呟いたが、そのツッコミには納得がいかず首をかしげる。

    「死にかけのセミか。」

    使い古された表現を引っ張り出してしまうあたり、たかが知れている。

    「うまくいかんなあ…もうちょっと頭の回転が早ければなあ。」

    (ネタは面白いんだけどねえ…)。ここ三ヶ月で嫌という程聞いた。最近ではひな壇芸人しか売れないというのか。もうちょっとネタを評価してほしい。


    「ちょっとあんた邪魔なんだけど。」

    「あ、ごめんなさい。」

    列に並んでいたことを忘れていた。ここのコロッケは美味しいのだが、行列に並ばなくてはいけないのが少しめんどくさい。だが、2週に一回しか販売しないので、買いに行かないわけにはいかない。

    「20個入りの肉コロッケ一つと10個入りのカニクリームコロッケひとつ。」

    冷凍保存が効くことが何より嬉しい。解凍するだけで美味しいなんて。

    「いつもありがとうねえ。」

    「い、いや、こちらこそいつも美味しくて助けられてます。」

    「また来てね。」

    誰とでもするような当たり障りのない会話を後に、家路を急ぐ。できたてのカニクリームコロッケを頬張りながら。あのおばさん、そんなに急がなくても買えたのに。必死になりすぎて周りの人も引いていた。

    「あのおばさんの話をすれば、ひな壇でうけとれるのかな…」

    いつからこんな計算高くなってしまったのだろうか。自分自身をけなし始める。昔はもっと自分のその時そのときの感情だけで生きている気がする。気がするだけで実際は違うかも知れないが。


    昨日のひろゆきの言葉が頭をめぐる。

    「記憶って作られるらしいぜ。自分の記憶だと思ってたことが、人から聞いた話を自分の記憶だって勘違いするらしい。だからおれと中居が友達なのも、誰かに言われたことかもな。」

    実は友達じゃない。そうだった方が幾分か気が楽だ。ひろゆきは悪いやつじゃないが、僕より面白いのが気に触る。悪気があるわけじゃないのがなおさらだ。


    家に着く頃には三つ目のコロッケに手が伸びていた。また食べ過ぎてしまった。ポストの中から宅配ピザのチラシがのぞいている。いつかピザを頼んでみたいと願い、チラシが溜まっていく。如何せん高くて頼んだことはないのだが。


    「んどーも!モジャンボーイズです!」

    テレビをつけると二人組の少し高い声が部屋中に響く。

    「授業と授業の合間の学生かよ。」

    自分のツッコミに納得はいかないが、チャンネルをニュースに合わせる。モジャンボーイズは最近売れ始めた若手芸人だが、何が面白いのか変わらない。リズムネタなんてどうせ一発屋でしかないに、なぜみんな食いつくのだろうか。同じ過ちを繰り返す人間に苛立ちを覚える。モジャンボーイズにではなく。彼らには苛立ちよりも、ばかだなあという感情しか抱かない。どうせ消えていくだけなのになぜその道を選んだのだろうか。本気でやらないやつ、自分自身と向き合わないやつが死ぬほどきらいだ。

    「人をきらいになるというのは、自分自身の嫌いなところを相手の中に見つけてしまうからですよ。」

    聞き飽きた言葉だが、確かにと思う。僕も僕自身と向き合っているわけではない。いつも逃げてばかりである。

    「人のふり見て我がふり直せ」

    おばあちゃんはことわざが好きだった。その口癖だった。実際人の振り見てもイライラするだけで自分を省みることはない。僕はそんな立派な人間ではないのだ。





    夏自主公第二弾舞台補佐を務めます志賀です

    小説家になるには才能が足りなかったので諦めます

    そんな僕の諦めたこの小説が、明日明後日イベントスペースnightでやる夏自主公第二弾、「僕、今日からスターになります。」に出るかもしれないし、出ないかもしれない。

    関係あるかもしれないしないかもしれない。


    真相はその目で確かめてください


    いや何も関係ないんですけどね?

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