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どん兵衛とエクレアとヨーグリーナとUZUDANと引き笑いと眼鏡
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    このブログを君が読んでいる時

    僕はもうこの世界にはいないだろう

    だけどどうか君は君の信じる道を歩んで欲しい

    そして願わくば

    僕との約束を

    僕と君が織り成した大いなる冒険を

    忘れないでいて欲しい

    我儘が過ぎるかな…

    だけど僕は信じてる

    君のこれからの人生という遥かな旅路に希望が溢れていることを……



    2019年12月某日


    連日続く極寒に思わずサンタもプレゼント運びを投げ出しそうな冬の朝

    僕、大角優翼は目覚めた

    「よく寝たな…」

    ついそんな何の面白みもない日常にありふれた台詞を言ってしまうくらいには快適な朝だった

    おかしい

    何かがおかしい

    僕は中央大学第二演劇研究会冬の自主公演第1弾の役者を務めていた

    故に毎日のように稽古があり、今朝は遅くとも8時前には起きなければならなかったはずだ

    なのに体がやけに軽い 

    清々しい気分でさえあった

    カーテンの隙間から零れる光もやけに多い

    「寝坊した」

    そう悟るには十分すぎる条件が揃っていた

    「今何時だ…?」

    頭によぎる当然の疑問

    僕の部屋に置き時計はなく時間はスマホで確認しなければならない

    頭の横にスマホは置いてある

    手に取るには何の労力も要さない

    だがしかし僕の体は動かなかった

    寝坊して遅刻が確定してしまった中で稽古場に赴く恐怖

    スマホを確認し現実を突きつけられる恐怖

    僕の扁桃体は次々に生まれゆく恐怖の処理に追われていた 


    時間にしておよそ5分

    気持ちを落ち着かせ、自らを鼓舞した

    暗闇の荒野に進むべき道を切り開くような覚悟でスマホを手に取る


    『11時22分』


    2で割り切れりゅ〜

    あまりの絶望感に思わずそんな事を思ってしまった

    本当に鳴っていたのか甚だ疑問に思うアラームの数々と主宰である神さん鵜飼さんからの通知が無慈悲にもスマホの待ち受け画面を埋め尽くしていた


    「すいません今起きました…」


    グループラインにメッセージを送信した僕は返信が怖かったのですぐさまスマホをぶん投げ身支度に取り掛かった

    とりあえず顔を洗う

    瞼は気持ちがいいほど軽いのに顔にぶつかる水は鉛のように重たい

    適当な服を選び家を飛び出す

    大学までの距離は近いわけではない

    電車を乗り継ぎ30分以上は時間をかける

    その上遅刻は確定しているので足取りは重い

    病気の妹のためにあるかもわからない薬を探し続ける旅人のような足取りで電車に乗り込んだ

    心を無にして電車の揺れに身を任せる

    そして車窓から見える住宅街の景色を見て思う

    「この目の前に広がる景色の中に遅刻した人おるんかなぁ」

    人間というのはどうしていいかわからなくなった時、自分と似たような状況にある者を見つけて安心しようとする…弱い…生き物だ…

    そんな事を考えていたら稽古場である地下ホに着いた

    地下ホの入り口は来る者を拒むような厚い鉄の壁だ

    前々から思ってたけどなんなんだこの入り口は

    新歓期なんて入りづらすぎて結局1回もワークショップ行けんかったわ

    のれんとかにしろや

    そしたら「大将いつもので!」的な感覚で気楽に入れるやんいい加減しろや

    と、憤慨しつつも無機物に逆ギレし出したらまあ終わりやろと自分を律し、勇気を振り絞って地下ホに入る

    結果から言うとやらかしたけどまあ許したるわ的なノリでなんとかそのまま稽古に移ることが出来た

    だが座組の皆さんの優しさに甘えているようではまた遅刻しかねない

    僕はその日もう2度と遅刻しないと心に決めた



    しかし


    現実はそう上手くはいかなかった

    こともあろうに僕は小屋入りしてからも遅刻を繰り返し、本番当日ですら遅刻した

    座組の方々には迷惑をかけまくり本当に自分の情けなさに呆れた

    そして冬の自主公演は無事終演し時は過ぎていった



    2019年12月31日


    僕は帰省して実家にいた

    ガキ使より紅白派の我が家なのでしっかりと紅白歌合戦を視聴し番組が終わる11時45分頃には自分の部屋に戻った

    「今年も終わりかあ」

    今年1年を振り返る

    浪人生として2度目の受験に挑戦し、縁あって中央大学に入学

    新入生発表や夏合宿、秋公演にこの前の冬の自主公演

    やっぱり振り返るのは二劇の事が中心だった

    そして記憶にも新しい冬の自主公演での度重なる遅刻

    「来年こそは絶対に遅刻しないぞ!」

    僕は心で叫んだ

    遅刻する自分は嫌だと こんな自分は嫌だと


    その時 白い光が部屋を包み込んだ

    「何だ⁈」

    目を開けるとそこにはもう1人の自分が立っていた

    「お前は……?」

    『僕は君自身。2019年の君さ。』

    「言ってる意味がわからねえ…」

    『人間は1年の始まりに生まれ変わるんだ。それは精神的なものではなく肉体的にね。多くの人間はそれに気づいていないけど。』

    「な⁈じゃ、じゃあお前は今年の俺なのか?」

    『だからそう言っているだろう?僕は2019年の君さ。』

    「…じゃあ俺は…今ここにいる俺は何だって言うんだ?」

    『君は2020年の僕。ほら、もう数分で年が変わるだろう?来年の新しい君が誕生しようとしているのさ。』

    「そ、そうだとしたら何でお前は俺の前に姿を現わす⁈多くの人間は生まれ変わる事に気づかないんだろう⁈」

    『君は今年で20歳になるよね。人は20歳になる年の初めにある選択が出来るんだ。それは自分をリセットする事が出来る選択。僕たちはこれを成人の悔恨と呼んでいる。』

    「な…そ、それは全ての人間に訪れるものなのか…?」

    『違うよ。この選択が出来るのは成人の前年に大きな後悔を残した者だけだ。君の場合は…心当たりはあるかな…?』

    「…遅刻…か…?」

    『その通り!さすが僕だね!察しが良い。君は遅刻を繰り返す自分を酷く嫌い、それによって周りの人間に迷惑がかかった事を後悔した。だから僕は現れた。さぁ、どうする?成人の悔恨を行うかい?』

    「それをしたら遅刻する事は無くなるのか…?」

    『そうだよ。成人の悔恨は猝鸞瓩箸覆蠡里帽錣濆まれる。君が遅刻する事は無くなるだろうさ。』

    「本当か⁈めっちゃおいしい話じゃんか!よし、やる!その成人の悔恨ってやつやるぞ!」

    『そうか。まあそんなにおいしい話でもないんだけどね。』

    「どういうことだ?」

    『成人の悔恨を行った者は悔恨の原因となった部分の記憶を失う。つまり君で言うと…二劇に関する記憶…かな。』

    「な⁈おいそれを先に言えよ!!」

    『ごめんごめん。言い忘れてたよ。』

    「じゃああんなに楽しかった二劇での思い出が…消えちまう…のか…。」

    『そういうことになるね。』

    「二劇のみんなも…俺の事を忘れちまうのか…?」

    『残念ながらそうだね。』

    「…。」

    『成人の悔恨はしない…かな…?もう年も変わる。そろそろ僕は…』

    「本当に…」

    『?』

    「本当にそれをすりゃあ遅刻する事は無くなるんだな…」

    『そうだよ。』

    「そうか。わかった。成人の悔恨を行う。」

    『いいのかい?言った通り二劇の記憶は無くなるんだよ?』

    「もちろん嫌だよ。本当に楽しかったんだ。その思い出が無くなっちまうのは嫌で嫌でたまらねえ。だけどさ、このまま遅刻し続けて二劇のみんなに迷惑をかける俺であるのはもっと嫌なんだ。」

    『そっか。うん。わかったよ。じゃあ時間も無いし早速行おう。』


    俺の部屋を包んでいた白い光は黒い光になった。

    2019年の俺は俺に鍵のような物を渡した。

    『この鍵を僕の胸に刺せば成人の悔恨は行われる。』

    「そうか…。」

    『さぁ早く刺すんだ。時間が無い。』

    「ごめんな。」

    『…?何がだい?』 

    「二劇に関する記憶が消えるって事はその記憶がある2019年のお前は、きっと辛い思いをするんじゃないかなって思ってさ。」

    『…⁈そんな事…これは僕の使命だ。気にしなくていい。』

    「じゃあお前……何で泣いてんだよ」

    『…⁈…こ…こんな事…何で…』

    「ごめんな。こうなったのは俺が後悔するような俺であったせいなんだよな。俺は…絶対生まれ変わるから!!遅刻しなくなっただけじゃなく!お前がその涙を忘れちまうくらい楽しい思い出に溢れる俺になってみせるから!だから!」

    『ありがとう…君は…優しいね…』

    「俺に優しいって思うってことはお前も優しいって事だろ?」

    『これは一本取られたね。』

    「ま、俺だからな!」

    『そうだね…うん…君は…君ならきっと大丈夫だ。』

    「またな…俺。あの世があったら…また会おうぜ。」

    鍵を刺す

    黒い光はまた白い光になった

    2019年の俺が消えていく


    『君のこれからの人生という遥かな旅路に希望が溢れんことを…』




    目を覚ますと朝になっていた

    気づいたら眠っていたらしい

    「紅白見た後自分の部屋に戻って…そっからどうしたんだっけ…」

    部屋に戻ってからの記憶が曖昧だがまあいい

    今日は元旦 2020年、新しい年が始まるんだ

    「そうだ!お年玉いくら貰えるかな〜」

    俺は部屋を出て階段を降りていった



    2020年1月某日


    大学の新学期が始まりテストもひと段落して暇になった

    去年はバイト三昧でサークルとかは入れなかったので今年はどこかサークルに所属したい俺はサークル一覧の冊子を眺めていた

    「へぇ…演劇のサークルがあるのか。行ってみるか。」

    二劇という演劇サークルが活動しているらしい地下ホに着いた

    「何だこの鉄の扉は…。」

    かなり入りづらい。

    しばらくその場で右往左往していたが俺はようやく決意を固めた

    「すいません…」

    重い扉を開く

    これからどんな冒険が待っているのか

    不安もあるが楽しみもいっぱいだ

    俺なりに精一杯頑張ろうと思う


    気のせいかどこかで誰かが笑った気がした


    END


    前半は実話ですが後半は完全なるフィクションです。ふざけました。要は遅刻しないぞって決意です。これで遅刻したらどうしよう。とりあえず明日からの合宿頑張ろうと思います。あとブログ滞納しててすいませんでした。

    卒業公演頑張る!!

    是非是非ご来場お待ちしております!


    中央大学第二演劇研究会

    2019年度卒業公演

    『ボンビクス・モリの回顧』

    於:シアター風姿花伝

    3/5(木) 18:30

    3/6(金) 18:30

    3/7(土) 13:00/18:30

    3/8(日) 13:00/17:00


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